U理論の旅路

~『U理論入門』 出版記念シンポジウム開催までの軌跡~

シンポジウム準備と、U理論の理解と、実践と

こんばんは、推進チームのみのるです。

 

昨日ミーティングの様子をお伝えした際にも触れました通り、私達推進メンバー個々においてもチームにおいても、どのようなあり方でシンポジウムの推進を行っていくのかというのは大きな命題であり、チャレンジでもあります。

ダイナミックな複雑性や社会的な複雑性、出現する複雑性の中にありながら、2月22日に迎えるシンポジウムに参加いただける全てのみなさん、関心を持っていただける全てのみなさんと、深く豊かな場を創っていくためによりよい準備を進めていこうと思っています。

 

そんな中、今日は職場の同僚と対話をする場があり、難しい局面もありましたが、自己開示がなされることで場が展開した、ということがありました。シンポジウム推進の話からは少し外れますがお許し下さい。

 

年初に、所属する会社の経営トップと所属部門長とがこれからの部門の方向性についてレビューを行う場があり、今日、部門長からメンバー全員にそのフィードバックがされました。ミーティングのうち前半はトップからのコメントが部門長から聞かされ、その後は小グループに分かれて、そこから何を感じ取ったかという対話を行いました。

 

前半のトップからのコメントのフィードバックは、本質を突く端的なメッセージで、「顧客を何社開拓する、何億の売上をあげるということには興味はない。数字を語るのではなく顧客を満足させること、そこに向けて自分達のなすことは何なのかのみを語れ。売上目標を掲げて追うのではなく、それらを成し遂げた後で結果はついてくるものだ。」というものでした。

数字をコミットして追いかけるのではなく計画も実行も自由を与えられる半面、顧客を満足させるという言葉の重さに、苦しさが感じられました。数字でがんじがらめだった前職には自由を欲していたものの、いざこのように自分たちの手に何もかも託されると、尻込みするよな感覚さえありました。

 

そして少しのブレイクを挟んで、後半では4名1グループで対話を行いました。テーマは2つ、経営トップおよび部門長は何を伝えたかったのか、ということと、フィードバックを聞いて自分は何を受けとったか・自分の中で何が浮かんできたのか。

どのグループも営業メンバーと支援メンバー(事務・運営メンバー)とが混じり、それぞれのグループで自由に対話を行いました。

 

私がいたグループでは、私のいつもの癖で、顧客を理解"しきる"ことの難しさや怖れ、"プロフェッショナルとして"顧客を満足させるのは一朝一夕では難しいのではないか、といったややもすると完璧主義的な発言を早い段階で口にしてしまい、残りのメンバーも、口々に自分たちの不足している点を指差し確認をしているかのように並べ出してしまい、目線が下に落ちたまま対話が滞りかけてしまいました。しかし、いずれのコメントも、どこか自分だけが出来ないのではない、というような自己弁護や防御のようなトーンばかりのように感じられました。

 

そしてある支援メンバーが、「経営トップから言われた顧客の声を聞け、というのは営業さん達に期待されていることであり、支援業務を行う私達はそれを行うのは無理なので、こちらできることをやります。」という言葉が出たときに、小声でポツリと「それは違う」と言っている自分がおり、そして相手もそれに気付きながら、顧客の声がいかに自分たちには届きづらいのか・また、その中で何とかやっていこうと思うが上手くいかないことも多くて難しい、という言葉が場に出され、さらに重苦しさは増しました。

シンポジウムの推進もお手伝いし、U理論入門も読み進めながらの日々の中にいながら、ここまでのやり取りは完全にダウンローディングであり、その後、少し聞くことに徹しながらも幾度か私が口にした言葉は、相手にも自分にもほとんど届かず、場は空転していたように感じられました。

 

その後、営業の1人が他責ではない日々の迷いを吐露したことで、先程の支援メンバーからも、「いつの間にか自分も自分の守備範囲を狭めてしまっている。営業・企画段階からもっと積極的に関わるべきだとは思うが、適切なことを言えなそうだとの思いから躊躇してしまっている気がする。」というそのメンバー自身に矢印を向けたコメントがあり、その際に、相手側の目玉から自分が見えた感覚になりました。

みんなに、「私がいうべきではない。私がやるべきではない。何か口にしよう・助けようとしても、正しいことを言える自信もないし、足を引っ張ってしまうだけだ。」という思いを抱かせてしまっている。さらに、普段あらゆるところで「顧客の期待を少しでも越えよう。もっとできるはずだ!」とまくしたて、一人でのぼせ上がってしまっている自分の姿が見えました。Sensingの状態に至ったのだと思いますが、そのときに見えた光景は、自分にとってはとても悲しいほど滑稽な自分の姿でした。

 

しばらくみんなの言葉に頷きながら、悲しみが少しだけ薄れてくるのを感じ、見えたものと今の気持ちを伝えようと思い、「自分が正しいと信じることばかり押しつけ、やや詰めの甘い意見は排除し、伸びやかな議論をするような空気を引き裂いてしまった犯人は僕自身であると思う」ということを伝え、やりづらい場所にしてしまっていたことを謝罪しました。

後で営業メンバーから聞きましたが、その時他のメンバーは僕の謝罪を驚いていたようだったということでしたが、私自身がダウンローディングだった状態から、相手から見えている自分のいつもの姿に気付き、それを受け止め自己開示できたことでさらに少し場がシフトしたのだろうと思います。

この後それぞれから、自分にもこんなことができると思ってはいるがなかなかできずにずるずると目の前の仕事に没入してしまっている、などの自己開示がなされました。苦しい言葉ではあるものの、出てきた言葉は当初のような暗いトーンは薄れてきて、4名の中でのソーシャルフィールドは豊かになり、それぞれの話への頷きも増え、モヤモヤ感はありながらも「自分がこれからどのように貢献していくのか」を真っ正面から捉えているような言葉が出されるようになりました。

 

長々と書いてしまいましたが、どこにでもある、営業と内勤メンバー同士の反目そのものであり、同じ営業本部に属する近い存在であるが故に、ちょっとしたこじれの積み重なりにより組織の壁が高く出来上がってしまったということなのだと思います。

この日はUの谷をくぐり、Creatingしていくだけの時間はなかったものの、再来週には丸一日かけて部門内で対話する場を設ける予定のため、その場に向けての関係の修繕・構築という意味では、とても意義深い時間になったと感じています。

 

様々な人が、身近なところでこのような行き詰まり感を感じ、諦めてしまったり避け合うようになってしまっているのではないかと思います。私自身が何をできるわけではありませんが、U理論への理解を深めることを通じて、より多くの人が今よりも望ましい関係性を手に入れられたらいいな、と素直に思います。

お手伝いしているシンポジウムでも、多くの出会いや気づきが生まれることを願って残りの準備期間を過ごしていきたいと思います。この場に関わらせていただくことが、私自身の実践そのものであることを感じながら、楽しんでいきたいです。